今日の風は、ちょっと春の匂いがする。
夕方の光が、すこし長くなってきた気がする。
手足が冷える日は、やっぱり生姜を足したくなる。
そんなふうに、私たちは知らず知らずのうちに、
「暦」と呼ばれる自然のリズムに寄り添いながら生きているのかもしれません。
そして、料理という日々の営みは、
その暦と調和することで――
わたしたちの心を、やさしくほどいてくれるのです。
◆ 「いま、この季節に合う味」との出会い
立春には、菜の花の苦みを。
夏至が近づいたら、さっぱりとした梅干しを。
秋分のころには、根菜の甘さをゆっくり味わって。
冬至の日には、かぼちゃや小豆でからだを温める。
こうした“暦と食”のつながりは、
自然と調和するためのやさしい知恵として、
古くから日本の暮らしに息づいています。
難しい決まりごとではなく、
「いまの季節、何を食べると気持ちがいい?」
そんな問いを、自分にそっとかけるだけでいいのです。
◆ 心とからだをほどく「リズムの再接続」
現代の暮らしは、季節の感覚を見失いやすくなっています。
でも、旬の食材を使って、今の気候に合わせたごはんを作るだけで、
心と体のリズムは、自然と整いはじめます。
「なんとなく落ち着かない」
「やる気が出ない」
「理由のない不安がある」
そんなときこそ、
暦に寄り添ったごはんを、ひと皿でも。
そこには、体調を整える栄養以上に、
季節と“今の自分”をつなぎ直すやさしさがあるのです。
◆ 暦と料理の調和は、自分との調和
旬のものを煮る、蒸す、和える。
季節の香りに包まれながら、
「おいしいな」としみじみ味わう時間。
そのひとときが、
過去や未来の焦りから私たちをそっと解放して、
“いまここ”に戻してくれます。
暦に合わせて生きることは、
自然に従うことだけでなく、
本来の自分にやさしく還っていくことなのだと思うのです。
◆ 最後に
暦のめぐりと、台所のリズムが重なったとき、
からだも心も、ふっとやわらかくほどけていきます。
季節に逆らわず、いまの自分に逆らわず。
料理を通して、静かに自然と手をつなぐ暮らしへ。
その流れの中で、
今日のあなたも、ちゃんと整っていきますように。
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