涼しい風が吹きはじめると、
台所の空気も、どこか静かで、落ち着いたものになります。
土の香りをまとった根菜、
甘みを増した果物、
ふっくらと膨らんだ新米。
秋は「受け取る」ための季節。
春に芽吹き、夏に育ったものたちが、
今、わたしたちのもとへと届けられます。
◆ 「がんばる」から「味わう」へ
春は準備、夏は挑戦。
そして秋は、「味わい、受けとる」ための時間です。
忙しさや勢いの中で見過ごしていたものが、
ゆっくり立ち止まることで、やさしく心に染みわたってくる。
たとえば――
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ごはんをふっくら炊く
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さつまいもを蒸して、湯気にほっとする
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銀杏の殻を割りながら、秋の香りを楽しむ
手を動かしながら「今あるもの」をていねいに受け取る。
それが、秋という季節のスピリチュアルなリズムなのかもしれません。
◆ 実りは、ただ「収穫」されるものじゃない
秋の実りは、目に見えるものだけではありません。
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小さな日々の積み重ね
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見守ってくれた誰かのやさしさ
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季節の流れの中で育った自分の変化
それらすべてが、
「今ここにあること」への感謝と実感として、
秋のごはんの中にそっと息づいているのです。
◆ ごはんは、人生のリズムと呼応している
旬の食材を使った料理は、
ただの栄養ではなく、**魂のリズムをととのえる“時間の記憶”**でもあります。
たとえば栗ごはんの甘み、
きのこの炊き込みごはんの香り、
お味噌汁に浮かぶさといものまるみ。
それらを口にしたとき、
過去の季節、過去の自分とも、そっとつながる気がしませんか?
◆ 最後に
秋は、がんばりのご褒美を受け取る季節。
“育てる”から“受けとる”へ。
“走る”から“味わう”へ。
どうぞ、たくさんの実りに「ありがとう」を伝えて、
あなた自身のなかにも、やさしく実ったものを見つけてあげてください。
今日のごはんにそっと添えられた一皿が、
この一年の豊かさを、静かに教えてくれますように。
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